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はじめに
権利意識の低いと言われる日本においても,市民や消費者としての権利意識の高まりとともに,患者の権利擁護や医療における意思決定への参加の要求が強くなっている.こうした変化は,医療技術の革新が医療の現場を大きく変化させたこととも関連すると考えられる.患者や病弱者,障害者や高齢者の意思決定(decision making),インフォームドコンセント(informed consent),自立(independency)や自律(autonomy),アドボカシー(advocacy)などの用語も日常的に用いられるようになった.しかしながら,連日のように病院や施設における医療倫理的な問題が,医療過誤や事故を含めて報道されている.
介護の社会化をスローガンに,高齢者を主な対象として施行された介護保険制度は発足後5年が経過し,サービス量と利用者の大幅な増加など一応の成果をあげている.現在,予防介護を目玉とする見直しが行われているが,将来的には対象年齢や疾病の枠を取り払い,障害者も対象にすることなどが検討されているという.この介護保険制度の導入は,保健医療福祉システム全体に大きな影響を与える改革であったといえる.しかし,病気や障害のために要介護となった人々が,この制度の特徴を示す「措置」から「サービスの申請と契約」への移行の意義を理解し,必要なサービスを実際に利用できるかどうかという懸念がある.特に,認知症高齢者やADLレベルの低い人は,自らの状態を理解して意思表示をしたり,適切に行動を起こしたりすることができないため,家族や第三者の援助に頼らざるを得ないからである.
以上のような社会的状況を背景に,今,改めて,患者・病弱者,高齢者のアドボカシーについて考える必要が生じている.なお,アドボカシーの原義は,意思表示をしたり,判断できない人に替わって..代弁すること」であるが,一般には..権利擁護」の意味と同義で使われることが多い.
本稿では,患者の権利と医療者の倫理,さらに高齢者虐待の問題を中心にして,患者・病弱者や高齢者・障害者のアドボカシーの確立,倫理的課題の明確化,看護の理論(T heory)・実践(Practice)・研究(Research)の統合,学際的な研究支援ネットワークづくり,さらに,政策への提言の必要性について述べる.
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