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2021(令和3)年5月24日午前6時45分,リハビリテーション医療に人生を注がれた石川 誠先生が74年の生涯を閉じられた.先生を慕い,人生に影響を受けられた方々は,突然の訃報に深い悲しみに暮れておられることと思う.初めて先生と直接お話しできたのは2010年の専門医会であるが,その前に私が急性期病院から回復期リハビリテーション病院に職を転じることを決心したのは,先生の存在そのものであった.その後,社会保険委員会の一員として会議が終わるたびに一献を交えさせていただき,先生の走ってこられたリハビリテーション医療への情熱と行動力を学ばせていただく機会を与えられた.その生き様は,まさに日本のリハビリテーション医療維新の父と呼べるものであったが,若き日の先生は坂本龍馬,そして私が直接知る先生は西郷隆盛のような人物であったと感じる.脳神経外科医からリハビリテーション科医に転じ,どこの医局にも属さずリハビリテーション科専門医となり,土佐の地で,チーム医療による回復期リハビリテーション医療を構築し,日本で初めて都市型の民間リハビリテーション病院を開設された.その成果と情熱を胸に,全国を駆け巡って多くの仲間をつくり,日本の将来を見据えて国との交渉に昼夜を問わず邁進され,2000年の回復期リハビリテーション病棟の創設,そして介護保険へのリハビリテーション事業導入というリハビリテーション医療維新を成し遂げられた.急速なリハビリテーション医療の拡大に際しては,立場の違いから批判的な方もおられたが,先生は決して敵・味方という視点をもたれることはなく,話し合いを通じて相互理解そして融和に努められ,制度に留まらず回復期・生活期リハビリテーション医療の質向上にも努められた.また,互いに対等な立場で意見が言えるように,誰に対しても敬称を「さん」とされたことは皆様ご存知の通りである.かく言う私自身も当初は先生への反骨心がありながらも,接するうちに門下生となった一人である.
最後に僧侶であるご長男による告別式の達嚫文をご紹介し,皆様とともに先生を偲ばせていただきたい.
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