巻頭言
リハビリテーション医学における医工連携
島田 洋一
1,2
1日本リハビリテーション医学会
2秋田大学大学院医学系研究科医学専攻機能展開医学系整形外科学講座
pp.888
発行日 2016年12月18日
Published Date 2016/12/18
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- 文献概要
超高齢社会の到来で,日本はまもなく巨大な老人ホームの様相を呈するとされる.この問題に対する医療,福祉政策の成否は国の運命を決定する.そこで,国は厚生労働省,経済産業省を中心に大規模予算を編成し,医療・福祉分野を将来に向けた経済的成長分野と位置付けている.しかし,それには医用工学を担う人材の確保が至上命題である.
全国で数多くの医工連携事業が行われているが,成功を収めるものは数えるほどしかないのが現状である.私は,1988年,英国,米国にリハビリテーション(以下,リハ)医学,動作歩行分析のため留学の機会を得た.そこで出会った欧米のbiomedical engineerには心底驚かされた.グラスゴーのストラスクライド大学はその養成校としてトップクラスであった.大学院大学で,工学系を履修し終えた彼らに生理学,解剖学,組織学,生化学など専門医学教育がなされ,医学と工学の真のバイリンガルであった.どうしてこのようなことが可能なのか聞いてみると,彼らにはbiomedical engineerとして大学医学部教授,大規模総合病院部長への道があり,就職に有利で,給料,社会的地位が高いからであった.わが国に目を転じると,医用工学,福祉工学を名乗る部門は多いが,欧米のbiomedical engineerのような真のバイリンガルは存在しない.
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