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はじめに
成人脊柱変形の治療には保存的治療と外科的治療があり,特に外科的治療の後療法では,リハビリテーションが必須である.リハビリテーションという言葉は広く知られるようになったが,成人脊柱変形に対する“医療”としてのリハビリテーション,すなわちリハビリテーション医療はいまだ確立されていない.リハビリテーション医療は,機能を改善させ,障害を克服し,活動を育むための医療であり5),紛れもなく治療である.リハビリテーション治療法には,理学療法,作業療法,言語聴覚療法,義肢装具療法などがあるが,その主軸となるのが運動療法である.運動療法の効果は,筋力の増強,心肺機能の強化,関節可動域の拡大,巧緻性の改善,疼痛の軽減,神経修復作用,糖尿病・高血圧症・脂質異常症など内科的疾患の改善などがあり,多岐にわたる.しかし,ただ運動をさせるだけでは,運動療法の効果を十分に得ることはできない.運動療法の適切な負荷設定として,American College of Sports Medicine(ACSM)は,頻度(frequency)・強度(intensity)・回数(time)・運動様式(type of exercise)の4項目で構成されるFITTの原則を用いることを推奨している11).さらに,疾病者や障害者に対し適切に運動療法を行うためには,医学的な条件が加味される.それは,全身状態の管理が重要であることはいうまでもないが,適切な運動療法を行うためには,全身状態に加え,荷重骨の安定,呼吸・循環動態の安定,疼痛管理,そして栄養管理である.これらの医学的管理を主治医ならびにリハビリテーション科医が行うことが重要である.また,成人脊柱変形患者の術後において,理学療法士や作業療法士は主治医と相談しながら,適切に運動療法を行う必要がある.われわれは,成人脊柱変形患者に対して医学的管理のもと,術後早期から積極的に運動療法を施行している.そこで本稿では,成人脊柱変形患者に対して術後早期から積極的な運動療法を施行するための工夫,および各運動療法を施行するうえでのポイントや留意点を解説する.
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