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2022年6月10,11日の2日間,第35回日本老年泌尿器科学会が山梨県立県民文化ホールにて開催された.いまだ,世の中はコロナ禍であり,現地開催とWeb開催のハイブリッド開催で進行された.学会テーマは「多職種チームで支える健康寿命」であった.過去,日本老年泌尿器科学会では,会員のほとんどが泌尿器科医または看護師だった.しかし,2016年(平成28年)に「排尿自立指導料」が新設され,排尿ケアチームにPTまたはOTが必須となってから,PT,OTの会員数が増加し,学術集会へのPT,OTの参加もかなり増えていると聞いている.本学会に参加した理由は,2日目のスポンサードセミナーにて演者を務めることになったため,また私自身が排泄リハビリテーションアプローチに興味があり,今後の臨床に役立つ情報を求めて医師や看護師,リハ職等,他職種の話を聞くためである.今回,セミナーやシンポジウム等の特別プログラムでは,私を含めて3名のOTが演者を務め,一般演題では2名が発表していた.OTが泌尿器科領域の一職種として認識されつつあることを感じる2日間であった.
まず1日目の様子をお伝えしたい.ランチョンセミナーでは,国立長寿医療研究センターのOTである神谷正樹氏が「排尿ケアチームの取り組みの工夫と認知機能が低下した高齢者に対する排尿リハビリテーション」を発表された.認知機能を評価するための手段の一つであるMMSEにおいて,検査結果の合計点数ではなく,どこが失点しているのか,どのような点に問題があるのかを把握することの重要性とそれによってアプローチ方法が変わることを述ておられ,私もエビデンスに基づいた違った角度からのアプローチの視点を得ることができた.午後のシンポジウムでは,新潟医療福祉大学作業療法学科の今西里佳氏が「訪問リハビリテーションに関わるセラピストの役割と多職種連携,今後の課題」を発表された.医師や訪問看護師,訪問介護職員,可能であれば家族も一丸となって,下部尿路機能障害にかかわる必要性や自宅環境で行う評価やアプローチについて具体的に述べられていた.訪問リハにおいて排泄アプローチが行えるようになるためには,それに必要な知識や技術を身につけること,卒前・卒後教育の充実を図ることが課題であることも指摘されていたが,現在病院においても評価やアプローチを実践するうえで同様の課題があると感じた.
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