あなたにとって作業療法とは何ですか?・第89回
あなたにとって作業療法とは何ですか?
佐野 恭子
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1医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
pp.425
発行日 2022年5月15日
Published Date 2022/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202962
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その人と家族にとっての“普通”を実現する仕事
高次脳機能障害のある方と家族の支援にかかわるようになって,自分の作業療法観はずいぶん変わったと思う.治療を生業とする以上,「今よりよい状態になること」を目標にさまざまなアプローチを模索するのは当然だが,その人の人生はその人のものであることを忘れていないか,目に見える短期的な効果を気にして寄り添い過ぎたり先導し過ぎたりしていないか,時に立ち止まって俯瞰する機会を与えてくれるのは,いつも作業療法の対象者であるその人と家族である.
「誰にでも凸凹(得意・不得意)があるのが“普通”ですよね」,「完全に治らなくても,ただ“普通”に暮らせればうれしい」——“普通”を望むたくさんの声に作業療法は,自分は,どう応えられるだろう.これからも,専門職として,いい意味での他者性を自覚し謙虚であること——現実を受け止め,半歩先で待ち,半歩後から支え,時に並走すること——を忘れないでいたいと思っている.
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