連載 作業療法を深める・第62回
ビッグデータから見える健康の未来(1)
村下 公一
1
Koichi Murashita
1
1弘前大学 健康未来イノベーションセンター
pp.148-155
発行日 2022年2月15日
Published Date 2022/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202875
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はじめに
世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本は,高齢者の健康増進に向けた対策が急務である.近年では「がん」,「心筋梗塞」,「脳卒中」といった三大疾病に加えて,「認知症」と附随して生じる諸問題が大きな社会的課題となっている.中でも弘前大学の所在する青森県は,厚生労働省が5年ごとに発表する「都道府県別生命表の概況」,すなわち平均寿命の都道府県ランキングによれば,男性は1985年(昭和60年)から,女性は2000年(平成12年)から全国最下位(平均寿命が最短)が続いており,日本一の「短命県」の状態である.最新の2015年(平成27年)実施の調査においても,平均寿命は男性トップの滋賀県と3.1歳,女性トップの長野県と1.7歳,それぞれ開きがある1).これは単なる高齢者の寿命の違いではなく,特に働き盛り世代の死亡率の高さに起因するもので,この背景には,喫煙率や飲酒率の高さ,肥満者数の多さ,健康診断受診率の低さ,スポーツをする人の割合の低さ等,総じて県民のヘルスリテラシー(健康教養)が低いことが関与しているものと考えられている.
本学では,長年にわたるこの青森県の平均寿命全国最下位(短命県)の状況を打開すべく,2005年(平成17年)から「岩木健康増進プロジェクト」と名づけた地域健康増進活動を一大展開し,活動の一環として毎年1,000名超の弘前市民(岩木地区)を対象とした大規模合同健康調査を実施している.その取り組みをきっかけとして,2013年(平成25年)には文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に採択され,今日の活動に至っている.
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