連載 作業療法を深める ㊲LGBT
性の多様性を知る—「LGBT」とは何か
河野 禎之
1
Yoshiyuki Kawano
1
1筑波大学人間系障害科学域
pp.54-59
発行日 2020年1月15日
Published Date 2020/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201974
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
「LGBT」という言葉が意味するものは何であろうか.多くの人は,それは「セクシュアル・マイノリティ」と呼ばれる人々を指し,最近頻繁に用いられる言葉として認識しているだろう.もっといえば,これまでテレビの中で「オネエ」や「ニューハーフ」と呼ばれていた人々に対する「正式名称」のようなニュアンスで理解している人もいるかもしれない.
残念ながら,「LGBT」という言葉が知られるようになった一方で,上記のような表面的な理解でとまっている場合や,それゆえに誤解や偏見につながっている場合も少なくない.「“LGBT”のことはよく理解しています」という人ほど,自らの中にある「男女二元論」や「異性愛主義」というアンコンシャス・バイアス(無意識のバイアス)を自覚することなく,「LGBT」を「特別な存在」で「だからこそ“支援”が必要な存在」として,“線を引いて”認識してしまっていることがある.そして,このことは医療・福祉領域においても例外ではない.むしろ,より閉鎖的な環境に陥りやすい領域であるからこそ,世界の認識の流れとの乖離が強く懸念される.
では,「LGBT」という言葉が意味する“本質”とは何であろうか.本稿では,この問いについて,まず「性の多様性」という観点から概説する.そして,「LGBT」を巡るよくある誤解や偏見の代表例を取り上げて解説を加える.これらを通じて,最低限理解しておきたい知識とポイントについて共有することを目的としたい.
Copyright © 2020, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.