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Key Questions
Q1:看護師からみたOTの活動の焦点とは?
Q2:認知症ケアにおける看護師とOTの役割の相違は?
Q3:認知症チーム医療における看護師とOTの協働の可能性とは?
はじめに:認知症地域ケアについての2つの経験
ここ数年,精神障害者への多職種チームによるアウトリーチケアの研究をしている.学会の多職種協働委員会のメンバーとしての活動等,OTとご一緒する機会も多くなった.統合失調症圏の人を対象とした仕事をしてきたが,これからの地域精神医療では認知症へのケアを抜きに展開することはできないと思い,認知症のBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)をもつ人のケアについて勉強を始めた.今回,認知症ケアにおけるOTへの期待について書く機会をいただき,思い浮かんだのは,認知症ケアを学んだ最近の2つの経験だった.
一つは,2012年初夏と2013年秋の2度にわたり,オーストラリアのパース(西オーストラリア州)とメルボルン(ビクトリア州)とで,認知症のBPSDに対するアウトリーチケアを行うDBMAS(Dementia Behaviour Management Advisory Service)1)の活動に同行する機会を得たことだ.パースのチームでは,認知症BPSDのアウトリーチケアや,市民に向けた認知症の啓発活動,介護者への電話相談に応じるチームであるDBMASのメンバーには必ずOTが含まれており,認知症患者が安心して生活できる環境の整備や,レクリエーション,問題行動解決のためのツール開発や運用に専門性を発揮して活躍していた.メルボルンには日本人3名のチームでうかがった.AさんはOT,Bさんはジャーナリスト,そして私は看護師・保健師である.私は前年にもオーストラリアのパースで参加した.今年の見学の機会をいただいたとき,ぜひOTにチームメンバーとして加わっていただきたいとリクエストした.
もう一つは,2012年秋に,島根県出雲市のエスポアール出雲クリニックで,重度認知症デイケアに1週間参加させていただいたことだ.このデイケアは,メンバー(利用者)が何かを「忘れた」と言ったときに,絶妙なタイミングでスタッフが,「(忘れてくださって,)ありがとうございます」と返すことで有名だ2).忘れた,わからないと皆に言ってくれることを,その場に対する信頼ととらえて,「信頼してくれてありがとうございます」と言っているのだと私は解釈したのだが,メンバーが1日1回は主人公になる居場所として,ユニークな,素晴らしい機能を果たしていた.この場にもOTがおり,日々の活動を看護職やPSWと共に運営していた.
川口3)は,認知症患者の生活の5つの構成要素を規定し,作業療法アプローチではこれらの領域のバランスを志向するとした.それらは①ADL,②役割・仕事,③遊び,④人間関係,⑤休養である.看護師としての私は,これまでセルフケアの6領域によって実践を整理してきた.それらは,①空気・水・食物,②排泄,③個人衛生,④活動と休息,⑤孤独とつき合いのバランス,⑥安全を保つ能力であった4).両者を比較すると,セルフケアモデルでは生理的な機能,OTは社会的な機能に焦点を当てているように思う.この分類は,看護師とOTの活動の本質的な焦点の違いについて,私が感じるものを説明しているように思った.そこで本稿では,オーストラリアと出雲でのOTとのチームワークの中で,私がもった今後のOT活動への期待を,この5項目に従って紹介したいと思う.
本文中,オーストラリアでの見聞のうち,OTの読者に見ていただきたいと思うものに関しては,できるだけ写真を掲載した.写真は,私が撮影したもの,およびインターネット上に紹介されているものを用いた.引用サイト等は文末に示すので参照されたい.また,メルボルンでの視察内容は,文献5に,詳細な写真とともに紹介されている.
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