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編集後記
白日 高歩
pp.464
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426900448
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今年の夏は雨ばかりの冷夏で,蝉の鳴き声もかすかな毎日であった.それでも8月後半に入ると思い出したように暑さのぶり返しがやってきた.私の所属する大学病院は今,例の日本機能評価機構の審査の真っ最中であり,この数か月はそれに向けての準備に追われ通しであった.準備をしながら気づいたことは,今さらに,われわれの病院への認識を一変させなければならないという事実であった.言い古された言葉であるが,これまでの病気中心の医療から,病気の主体者(担病者)である患者にとっての医療,すなわち患者中心の医療への転換が大きく迫られているということの事実である.今日までのわが国の医療が医師中心の医療であったとは決して思わない.しかし,患者の意思,希望,社会的状況など色々の因子を無視して病気のみを科学的に捉える医療が医師の取るべき態度として定着していたことは否めない.もちろん,医師が科学的事実を無視して素人と変わらぬようなレベルで患者と一喜一憂するのは患者中心の医療といえず,むしろ堕落とみなすべきであろう.大切なことは,すべての医学的データを患者側に提示して,そのうえで患者の意思が尊重される治療法を選び,いったん治療に入ったら患者と医師の緊密な協力関係で病気に立ち向かうという姿勢の維持であろう.この際に強調しておきたいのは,患者中心の医療とはいっても患者の主張が100%正しく,100%認められて当然ということなのではない.
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