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「日本内視鏡外科学会発足を機に,学会機関誌として「JSES」(ジェイセス)を創刊することになった.」これは,初代編集主幹で初代理事長の故出月康夫先生が,1996年2月に創刊の辞の冒頭にかかれた一文である.さらに「日本内視鏡外科学会は1990年に創立された内視鏡下外科手術研究会を母体として,1995年2月に新たに発足した学会であるが・・・」と続く.因みに創刊号の特集は「大腸癌に対する腹腔鏡下手術のcontroversy」で,前理事長北野正剛先生と私の論文も掲載されている.当時,会員数は2,000人程に急増し,満を持して機関誌の創刊に至ったのであった.あれから20年を経て本学会は会員数も12,000人を超え,世界一大きな内視鏡外科系学会へと成長した.既に北島政樹第二代理事長と北野前理事長のご尽力によって,英文誌ASESも発刊され学会のさらなるグローバル化も図られている.
今回,編集委員も一新しJSESはまた新たな一歩を踏み出した感がある.投稿数も毎年増え,採択率は30%程度と厳しさを増してきている.編集委員の負荷は重く,多忙な委員には誠に申し訳ないと思わざるを得ない.様々な分野の若きリーダーである編集委員は投稿する側の思いを汲み取るべく,真摯に査読してくれるメンバーであると確信している.内視鏡外科は手技の工夫とテクノロジーの革新によって,その進歩が成し遂げられてきた.多くの知恵や経験を共有することは,あらゆる領域で役に立ってきたに違いない.その意味で本誌は内視鏡外科の進歩に欠かせない存在であったのではなかろうか.多くの国内の学会が英文誌へと舵を切り,インパクトファクター獲得に成功している.日本消化器外科学会もいよいよ英文誌発刊の最終段階に入り今後の邦文誌の在り方について議論されている.日本内視鏡外科学会の国際化という意味では,ASESの発展も重要であり邦文誌の将来の立ち位置も真剣に議論していかねばなるまい.また,邦文誌を英文誌と同時に継続することは,経済的に難しくなってくる可能性もある.内視鏡外科が様々な疾患の標準的治療になるにつれ,次の20年は機関誌の在り様も,学会の在り様とともに変質していくに違いない.創刊の辞で故出月先生は,新しいテクノロジーを外科医療に導入するためには,4つの条件が満たされることが前提であると述べている.即ち(1)有用性と安全性の確認,(2)両者が従来法より優れていること,(3)術者がテクノロジーをマスターすること,(4)経済性があること,である.そのためpeer reviewに基づくJSESが生まれ,その理念は脈々と受け継がれてきた.これから雑誌の形態が時代とともに変わることがあったとしても,この理念を踏襲していかねばなるまい.
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