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本誌の編集委員に任命され,初めての編集後記執筆の機会が巡ってきた.気が付いてみると多くの欧文・和文誌の編集委員に加えて頂き,査読や編集作業に要するエフォート率が年々上昇しているのが現状である.そんな中で本誌の「アナログ式」査読システム(失礼!)には当初戸惑いを感じた.私がEditor in Chiefをさせていただいている某英文誌は,電子投稿,電子査読で判定し,自分以外の査読者のコメントもフィードバックされるという,現在ではごく当たり前のシステムだ.本誌では,紙媒体の投稿論文が「どかっと」送られてきて,署名入りの査読結果を提出する.二人一組で一つの論文を査読し,すべての論文を編集委員全員で審議する.同じ論文を査読した別の委員が全く異なる評価をすることもあり,しかもそのコメントを目にするのは編集委員会の当日である.異なる判断をした委員の意見にも配慮しながら,自らの論点を述べ一つの判定に収束させていく過程は,まさに人間模様を反映した微妙なさじ加減の議事進行となる.当初,この方式に戸惑っていた私も今ではその良さを痛感している.電子投稿,電子査読形式ではフィードバックを行っても査読基準の統一は極めて困難であり,一編の論文の査読者を選定し,判定を下すAssociate Editorの力量に依存している.一方,本誌では査読者(編集委員)全員が一堂に会する機会が定期的に存在する.お互い面と向かって議論を重ねていると,本誌の理念,判定基準がおのずと浸透し,私を含め新メンバーが加わって以来,数回の編集委員会を重ねるうちに判定の一致率は明らかに向上している.編集委員会を北野理事長自ら陣頭指揮をとられていることが大きな要因であることは間違いないが,お互い顔を合わせて相手の人柄を少しずつ感じながらチームを作っていくこの「アナログ方式」は大変有効である.昨今グループ電子メールでの意見交換はごく当たり前である.私もいくつかのメーリングリストに加えて頂き,飛び交うコメントに「ふむふむ」と頷きながら勉強させていただいている.ところが,そこにコメントを書き込もうとしたとき,多少の躊躇を感じるのが正直なところだ.顔の見えない相手と意見交換することへの不安であろうか? ソーシャルネットワーク全盛の今日にあって,まさに時代遅れの情けない感覚である.本誌の編集委員会に参加して,自分がアナログ人間であることを痛感した次第である.子供たちに勧められて購入したスマートフォンも今一つ使いこなせていない.しかし,デジタル社会が進化すればデジタル社会の中でアナログ時代の良さが再現され,非デジタル人間がそれを意識することなく溶け込めることは間違いないだろう.それこそが超高齢化成熟社会における真のデジタル技術といえよう.一緒に食事をして,雑談をして,そして学術的な熱い論議を交わす…私にとって本誌編集委員会は楽しいひと時である.
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