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平成26年5月日本専門医機構が発足した.これまでの専門医制度や類似の各種認定制度が各学会で運営され,国民にも理解される共通の基準に基づく制度でなかったことなど様々な問題が指摘されてきた.我々自身すでに多くの専門医や認定医を取得,更新しているがそのための経済的負担は決して軽微ではない.各種学会や講習会へ参加するために費やしている時間についてもう一度冷静に見直すいい機会である.私自身「こんなに専門医や認定医を数多く取得していて何の意味があるのか?」と更新のたびに疑問に感ずることがある.それでも多少学会に参加して,お金さえ払えば更新できてしまうものも多く,「ついつい」「とりあえず」更新してしまう.これが多くの学会,専門医制度が乱立している原因であろう.
今般発足した日本専門医機構により基本領域とこれに関連するSubspecialty領域の専門医制度が整備されることになる.現在,日本内視鏡外科学会が運営している技術認定制度は,現時点では具体的な議論が進んでいないが,将来的にこれら機構による未承認部分についても検討が進む予定である.内視鏡外科手術を専ら行っている医師にとって,技術認定医資格は,是非とも取得・更新したい極めて重要な資格である.こうした高度の技術,専門性を定量的に評価していく手段としてNational Clinical Database(NCD)のデータ活用が期待されている.JSES技術認定医の関与により,ある一定の術式の手術成績における医療安全のみならず合併症軽減による医療経済上のメリットがあることが証明できれば,技術認定医の関与する手術に対するインセンティブをつける根拠ともなろう.現在でも,若手外科医は,「少しでも自らの技術を磨きたい」「向上した技術を第三者に認めてもらいたい」という純粋な向上心から,日々努力精進し,技術認定試験に挑戦しているのであるから,インセンティブなどは必要ないという議論もあろう.しかし,内視鏡外科の分野を目指す若手医師が,多大なるエネルギーを注いで修練を行った結果が医療の中で正当に評価される制度を構築することは極めて重要である.プロスポーツの世界でもしっかりとしたインセンティブが確立した競技には多くの優秀な「競技人口」が集結し,結果としてその競技の国際競争力が向上してゆく.もちろん医療をスポーツと同じように論ずることはできないが,厳しい修練を積んで高い技術を習得しようとする志の高い若者を社会が正当に評価することで,その分野のレベルが底上げされ,結果的に国民が高いレベルの医療を享受することになる.社会の高齢化,医療費の拡大がさらに深刻化するなかで,「高い技術をどう評価するか」は大変難しい問題であるが,日本の医療の質を担保し,優秀な人材がやり甲斐を感じて医学・医療の道を目指す社会を築くためには,今回の専門医制度改革は大きな鍵になると考えられる.
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