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編集後記
徳村 弘実
pp.144-145
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426100164
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今回は腹腔鏡下大腸癌手術の特集が組まれた.大腸癌手術は1989年には米国で行われていた.最初に取り組みを始めた外科医,そして手術に必要な自動縫合器などの開発には感服し低頭するのみである.未知の領域を切り開く外科医には,危うさと勇気が同居する.腹腔鏡下胆囊摘出術のはじめの一歩は,冷汗三斗であった.駆け出しのエルステマーゲンを彷彿とさせる.吻合部は大丈夫なのだろうか,合併症は起きないだろうか.このような不安を外科医は何度も経験していかなければならない.
外科領域から実験的要素を一掃することは永遠にできない.腹腔鏡下胆囊摘出術が導入された頃,当初のガイドラインや一般の予想と違い,10例,20例,50例と経験を重ねても暗中模索のような心細いような手術であったことは否定できまい.より所は今となっては古典となったReddick,Olsen,Petersらの文献と1回の高価なセミナー出席経験だけであった.このような感覚は,トールワルド著『外科の夜明け』を読んでみる,あるいは読んだことのある方には読み返していただければ,この20年ほどの若い外科領域のあらゆる性質と問題点を含めよく理解できるのではないか.本誌も,暗海の灯台のような役割を果たしてきたといえよう.
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