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腹膜透析peritoneal dialysis(PD)とは,1923年にドイツのGanterによって始められた腹膜を透析膜とする透析療法である。日本では1965年から始められていた血液透析hemodialysis(HD)の装置が不足していたために慢性腎不全の治療法として広く行われた。当時は1回に透析液2L注入,排液を行うことを10回繰り返し,1日約20Lの透析液を使用する間欠的腹膜透析intermittent peritoneal dialysis(IPD)で,これを週3回実施していた。1978年にはこれを連続化し,標準的には1日に8Lの透析液を使用する連続携行式腹膜透析continuous ambulatory peritoneal dialysis(CAPD)が米国のPopovichとMoncriefによって報告された1)。日本では1980年にPDが初めて行われ,1983年に保険収載された。PDは1980年代に広く行われたが,1990年代に腹膜劣化に伴う腹膜癒着の合併症である被囊性腹膜硬化症encapsulating peritoneal sclerosis(EPS)の発症が報告され,その後の広がりにブレーキがかかった2)。1990年代以後のPD患者数は9000人台で推移していた。その流れに変化を起こしたのが2000年に日本で発売された中性透析液の登場である。それ以前の透析液は,ブドウ糖分解を防ぐために酸性化されていた。さらに浸透圧物質として高濃度ブドウ糖が使われており,腹膜への侵襲が強い生体適合性の不良な透析液であった。新しい中性透析液は生体適合性が良好であったこと,高濃度ブドウ糖の使用も控えられたこと,さらに腹膜炎の予防によりEPSは急激に減少した。2018年以後の診療報酬の改定もあり,2020年末の日本透析医学会統計調査の報告でPD患者数は10338人(全透析患者の3.0%)と初めて1万人を超えた3)。
本稿では,PDの基礎を理解するために,腎臓の役割,透析の働きを概説し,さらにPDの原理について説明する。
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