特集 身体診察
各論編
【コラム②】尤度比(LR)—EBMをファッションでなく正しく行うための基礎知識
ジョエル・ブランチ
1
,
跡部 かおり
2
Joel BRANCH
1
1八尾徳洲会総合病院 臨床教育部
2山梨県立中央病院 救急科
pp.86-90
発行日 2022年9月20日
Published Date 2022/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901000
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私が医学のトレーニングを開始した頃というのは,ちょうど,日々の診療における臨床的決定にあたり,エビデンスに基づいた医療evidenced based medicine(EBM)を行うことが重要視され始めた時期だった。
英国では,臨床における重要な決定を行うために患者の病棟回診を行うことが当たり前になっており,そこでは最新のエビデンスを使っている。チームリーダーや同僚は,病状に関連する最新の論文を議論し,それに基づいて検査や治療の変更を決定する。私の考えでは,医学の基本的なトレーニングに関して,感度と特異度の使用は,多くの学生,若手医師,上級医師にとって,常に概念としてとらえられていないように思える。EBMは,実用的なものというよりも,現代のファッションのように思える。いまだに多くの決定が,上級医によって経験とゲシュタルト的な印象だけに基づいてなされているため,EBMが十分に活用されていないという面もあるようである。そのため,私が直接教えている医学部を卒業したての若い医師たちには,EBMが日常の医療行為の一部になっていないのが現状のようである。
本稿では,ベッドサイドでEBMを正しく行ううえで必要な基礎知識として,尤度比(LR)について解説したい。
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