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今月は,意識下挿管の適応を迷った関節リウマチ患者に対する周術期管理についてカンファレンスを行う。
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全身麻酔導入後,マスク換気も気管挿管も困難で,換気不能・挿管不能・酸素化不能cannot ventilate, cannot intubate, and cannot oxygenate(CVCICO)状態が間近に迫りくる。麻酔科医なら誰もが避けたい悪夢の一つであろう。Ovassapianらは,CVCICO状態の原因が舌扁桃肥大であったことを報告した(Anesthesiology 2002;97:124-32)が,関節リウマチ関連の困難気道もその原因に加えてよかろう。この状態に陥らないための最も効果的な方法が意識下挿管であることは,麻酔科医には常識である。そして,困難気道管理ガイドラインに従うと,術前に困難気道が予測される,もしくはその既往がある場合,意識下挿管となり,その選択はクリアカットである。しかし,気道確保の困難性には大きな幅と種類があるにもかかわらず,どの程度の,どのタイプの困難なら意識下挿管の適応となるのか,明確な基準はない。さらに,術前の困難気道予測評価で最も危険と判定されても,現実に困難であるのは5%以下とされる(Anesthesiology 2013;119:1360-9)。つまり,多くの偽陽性が存在する。これに加えて,意識下挿管は熟練しないと患者に苦痛を与える,いやエキスパートが行っても一部の患者には苦痛かもしれない。麻酔科医は,できることなら全身麻酔下に気管挿管したいと考える。Benumofが,安全な気道管理における意識下挿管の重要性を強調してから(Anesthesiology 1991;75:1087-110)四半世紀が経つが,いまだ意識下挿管の決定に迷う臨床場面は少なくない。
関節リウマチ関連の困難気道は進行性であり,その困難度は変化する。頭頸部が極端に屈曲拘縮していれば,意識下挿管の適応に迷うことはないが,そこに至るまでのさまざまな程度の困難気道を有する関節リウマチ患者が整形外科関連の手術を受けることになるのが現実である。
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