徹底分析シリーズ 研修医の素朴な疑問に答えます 血液製剤
全血が用いられなくなったわけ
小川 覚
1
OGAWA,Satoru
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室
pp.1138-1139
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200066
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2004年,日本のある地域中核病院にて待機的帝王切開術の術中に大量出血が発生し,妊婦が死亡した。担当執刀医が逮捕,起訴されたことから,医療に対する社会認識の危うさを露呈する結果となり,全国の産科医のみならず,多くの麻酔科医の関心を集めた1)。このケースでは,状況に応じた血液製剤の迅速確保が難しかったことが予想されるが,病院内では職員を中心に,妊婦と同型の新鮮全血fresh whole bloodが3000mL程度,緊急的に確保されていたとされている。しかしながら,輸血後移植片対宿主病graft versus host disease(GVHD)への危惧といった理由から,結果,この血液は利用されることはなかった。母体への直接的な死因などについては当事者外が憶測で論じるべきではないが,すべての医療者に全血使用への正しい知識が求められることは学ばされた。
本項目の「全血を用いる」という輸血医療を考えるにあたっては,人全血液-LR「日赤」を使用することと,前述の新鮮全血を使用可能かという問題は,分けて論じる必要がある。
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