症例検討 麻酔でよく用いられる薬物の副作用
巻頭言
内藤 嘉之
1
1明石医療センター 麻酔科
pp.379
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101205
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いつもの薬に足をすくわれないために!
手術は,生体にとってまさに激震である。われわれ麻酔科医の仕事は,周術期管理を通して患者のホメオスタシスを保つことである。特に手術中は,安全域が狭く侵襲的な治療が行われる時であり,患者が示すどのような異常サインに対しても,その原因をすみやかに特定して適切に対応することが求められる。
今回検討される五つのシナリオ,麻酔でよく用いられる薬物の深刻な副作用は,麻酔科医が用いた薬物そのものが患者に有害に作用するという点で,通常の麻酔管理で想定される範囲を超えた災厄である。いつもの薬が予期せぬ異常事態をまねいたことを正しく認識し,思い込みや楽観を排して的確に対処することは,それほど簡単なことではない。しかし,判断の誤りや対応の遅れが重なると,麻酔管理はメルトダウンし,患者の生命はたちまち危機に陥る。
それぞれの症例では,こうした病態の理解と治療法の選択に至る道筋が,広い知識と豊かな経験にもとづいて明快に示されている。いつもの薬に足をすくわれないためには,筋道だった考えと判断にもとづくしなやかな危機管理術が必要である。
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