連載 薬物動態を理解しよう
第5回:クリアランス
中木 敏夫
1
1帝京大学医学部 薬理学講座
pp.210
発行日 2007年2月1日
Published Date 2007/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100272
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薬物動態学のクリアランスは生理学の概念と同一である
薬物動態でのクリアランスの概念は,この分野のみに当てはまる特有な概念を使用しているのではなく,生理学におけるクリアランスの概念をそのまま拝借しているにすぎない。クリアランスの概念についてよく知られているのは腎臓のGFR(糸球体濾過率),すなわちクレアチニンクリアランスである。クレアチニンは糸球体ですべて濾過され,なおかつ尿細管からの分泌や再吸収はない物質であるから,クレアチニンクリアランスを実験的に測定することにより求めることができる。簡単に復習すると以下のようである。
単位時間当たりに動脈から消失するクレアチニンの量と尿中に出現する量は等しいことから,クレアチニンの腎動脈血清濃度をCrs(mg/dl),尿中濃度をCru(mg/dl),腎血流量をQr(ml/min),糸球体濾過率をQuとすると,
Crs × Qr=Cru × Qu
が成り立つ。すなわち,クレアチニンクリアランス(またはGFR)は
Qu=Qr × Crs / Cru
となる。クリアランスで注目すべきポイントはその物理量の次元であり,ml/minという体積を時間で割った次元を持っていることである。これは薬物動態学のクリアランスでも同様であり,クリアランスの意味としては,単位時間当たりにどれだけの血清から薬が除去されたと見なすことができるかと考えることができる。
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