徹底分析シリーズ 気道確保のストラテジー
大人の気道確保が困難な症例の発見法とその感度や特異度
志賀 俊哉
1
Toshiya SHIGA
1
1東邦大学医学部 麻酔科学第2講座
pp.24-29
発行日 2007年1月1日
Published Date 2007/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100213
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私が麻酔科に入局した十数年前,挿管困難症は大変恐ろしいものであった。
オーベンがいつものようにラボナールとマスキュラックスを投与したのち,研修医の私が喉頭鏡を挿入する。
「全然見えません!」と,いつもの調子で私が言うと,
「本当に見えないのか??どれ見せてみろ」
オーベンが半信半疑に喉頭展開してから,初めて事の重大さに気づいた。それからは,指導医が入れかわり立ちかわり部屋に入ってきて腕を競い,そこは指導医の“技のデパート”と化した。ファイバー挿管,ブラード喉頭鏡,逆行性挿管,やみくも挿管,食道挿管……。喉頭を突っつき,出血や浮腫を起こし,次第にマスク換気も困難になり,酸素飽和度が低下することもあった。常勤医のいないバイト先の病院に一人で麻酔をかけに行ったときなど,さらに事態は厄介で,運悪く挿管困難症に遭遇すると,手術を延期せざるを得ないこともあった。
その後,ファーストラックやトラキライトなどによる,“喉頭展開を必要としない気管挿管”というオプションが急速に広まってくると,挿管困難症は以前ほど恐ろしいものではなくなったように思える。それでも,予期せぬ気道確保困難unanticipated difficult airwayは,忘れたころにやってくる。気道確保困難が予測できれば,あらかじめ筋弛緩薬を投与しないなど,万全の準備で臨むことができる。
本稿では,解剖学的・病的異常のない,一見すると外見上普通に見える患者の気道確保困難の予測について,その方法と限界を,過去の研究とわれわれが最近発表した研究1)をもとに述べていく。
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