實驗室より
日米醫學者協議會の印象(生化學),他
宮本 璋
1
,
淸水 文彦
1
,
熊谷 洋
2
,
藤本 克己
2
1東京医科菌科大学
2東京大学
pp.91-95
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905547
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
少くとも吾々の部門に於いて,今度の協議会が,開会前にいろいろ危憂されたような不愉快な事も一寸もなく,甚だ円満にそして甚だ効果的に終始出來たのはうれしい事であつた.これは誰れでも云い合つたように偏えに團長のロング教授や生化学担当のキヤナン教授の人柄によつた事でこれらの両教授が米國でも一流の,ほんとの学者であつた爲めに,吾々は今度の協議会の長い期間を通じて,其の意味の"國境のない"科学の雰囲氣に浸る事を得たのであつた.
私は今度の協議会に出席されなかつた方々に先ずこの雰囲氣に関して詳しく御報告しなければならないと信じている.何んとなれば,たとえもし今度の協議会が,発生的には巷間傳うるところの──これは勿論信じたくない事ではあるけれども──或種の不愉快な因子があつたにしろ無かつたにしろ,或は又実際に開会式の当日に於ける或る日本側の委員の式辞演説が,日本語のそれと,英語のそれとの間に,その内容が全く違つたものであつたりした不愉快さはあつたにしろ──こんな妙な,式辞の形式が公開の席上でなされた事は,恐らく文明國ではあまり類例のない事であるに違いないのであるが──しかしこんな不愉快さも,ほんとの"國境のない"科学の雰囲氣と云うものの前には,常に無視され蔑視され得るものである事を吾々が正しく確認し得た事丈でも,今度の試みは吾々にとつて誠に大暑を忘れさせる涼風であつた事はうれしかつた.
Copyright © 1950, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.