コミニケーション
シナプス小胞仮説の問題点—Tauc講演を聞いて
黒田 洋一郎
1
1東京都神経科学総合研・神経生化
pp.362-363
発行日 1980年8月15日
Published Date 1980/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903408
- 有料閲覧
- 文献概要
フランス,パリ郊外の細胞神経生物学研究所所長のLadislav Tauc教授は生理研の招きで本年2月来日され,岡崎の生理研コンファレンスに出席されたあと,各地をまわられ,東大医学部生理,東京都神経研では"Vesicular hypothesis and Acetylcholine release"と題する講演をされた。
シナプス小胞仮説〔アセチルコリン(Ach)の量子放出(quantum release)がシナプス小胞(SV)のexocytosisによって行われるという考え〕は伝達物質放出の最も考えやすい機構として広く知られている。しかしながら筆者も参加した1976年St. Andrewsで開かれた"Synapses"国際シンポジウム1)あたりから,この仮説の可否を主張するデーターの発表とそれをめぐるはげしい論争が起こり,一昨年あたりからはTrends in Neuroscience誌上で一部感情的とも思われるやりとりまで行われ,依然として結着をみていない2)。
Copyright © 1980, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.