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実験講座
カニの平衡胞感覚線維のコバルト染色と平衡胞の灌流刺激
Cobalt staining of the statocyst sensory neurons in the crab and stimulation of the statocyst by perfusing the canal system
岡島 昭
1
Akira Okajima
1
1横浜市立大学文理学部生物学教室
pp.455-463
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903022
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感覚器や感覚細胞の生理学的な研究にとつても,実験の目的にかなつた「うまい材料」をみつけることの重要であることは多言を要しない。筆者らはカニを用いて,平衡胞の感覚入力による眼柄筋運動制御の中枢機構を調べてきたが11〜13),この材料は実験の取扱いの容易さ,システムの複雑さの程度などの点で中枢機構の研究に適しているほか,感覚生理学的な研究にも好都合な面が多いように思われた。筆者らの平衡胞の感覚生理に関する研究はごく大づかみのものであるが,この実験を通じて気づかれたいくつかの点を述べてみよう。
カニの平衡胞に関する研究は予想外に少ない。機能の概観を得るため,本論に入る前に簡単に紹介すると,その形態学的な研究は古くHensen6)(1863)にはじまつている。彼は詳細な形態学的知見に基づいて,カニの平衡胞が脊椎動物の内耳に相当する平衡感覚と聴覚の機能をもつと結論した。感覚毛の形態をはじめとする彼の記載そのものは,一,二の細かい点を除いて現在の知見に照らしても正確である。その後,Prentiss10)(1901)は同じく形態学的な根拠から,エビやカニの仲間(十脚類,decapod Crustacea)の平衡胞の聴覚機能を否定し,さらに,カニの平衡胞は見掛け上脊椎動物の半規管と似た形態をもつが,実は平衡胞の内液が外液と通じていて,閉鎖管系をなしていないという理由から,半規管と同様に運動感覚に関与するという考えをも否定した。
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