巻頭言
東南アジアと日本の医学研究
竹内 正
1
1日本大学
pp.161
発行日 1972年8月15日
Published Date 1972/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902929
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東南アジアの国々をまわつていて,しばしば出会うシーンは基礎医学教室の貧しさを嘆く教授達と,かれらが内職に開業している実情を聞かされることである。貧しさといい,内職といい,事のよしあしを今ここで論ずる積りはない。それをするなら,その前にかれらの長い歴史と,広い社会的背景を充分知つてかからねばならないと思う。ここでは頭からの批判と冷笑ではなく,われわれはどうすればかれらの助けになれるかということである。
われわれが基礎教室で日夜念ずることは,如何にして研究業蹟の内容が向上するかである。かれらとても同じ思いにあるに違いない。幸いにもわれわれは外国(主として欧米)の文献が自由に読め,欧米の知人友人との交流が自由であり,発表される論文も国際的レベルに達することができる。同じ思いのかれらには,しかしながら,そのすべを知らないものもいる。外国との交渉も頻繁ではない。文献も充分には買えない。話し合つてみれば充分能力はあるし,頭脳の回転の驚く程の人がいる。相当数の教授陣が欧米に留学を経験している。語学の力は日本の教授の平均よりはずつと高い。考えねばならないことはかれらがほとんどすべて欧米への留学生であることである。かれらの眼は西または東を向いている。British Diploma, American Board,フランスへの留学に対する憧れは依然根強いものがある。
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