今月の表紙
東南アジア医療協力
巽 典之
1
,
津田 泉
1
1大阪市立大学医学部臨床検査医学教室
pp.891
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902888
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私は毎年夏に発展途上国に数週間出かけ,僻地の診療所や病院を訪問し,風土病の多国間共同研究をすることにしている.その中には草葺きの家の前を腰蓑だけの女性やペニスケースをつけただけの男性が悠然と闊歩する姿を見かける場所もある.ここで生活する人の姿を表紙にしようと考えていたがその方々のプライバシーのこともあるし,裸の写真を掲載すると“楽しく美しく教育的でありたい”と願う本誌編集部の方にお叱りを受けそうだし,高潔なる私の品位を問われかねないのでやめにした.
さて,東南アジアの島々を巡ってみると,私どもがはるか昔に見かけたような検査機器と検査法がいまだ健在であることに驚かされる.写真aは手回し遠沈器であり,血清分離や尿沈渣に使われている.ただ,手回しの労力を考えると,私のようなか弱い男性向きではなさそうである.写真cは錆つきながらもチャンと動いている光電比色計であり,肝機能検査,血色素量,およびDIPCテストの測定に利用されている.血算は古今伝統のガラス計算盤法であり,顕微鏡は自然光を反射鏡で取り入れる単眼式のものである(写真b).使い込まれ,もう塗装もはがれかけた古い顕微鏡である.自然光は紫外線から遠赤外線までを含む最高の光源である点で電気光源よりも優れていることになり,これでもって毎日サラセミア症(写真d)などの血液像,沈渣,マラリア原虫探しが行われている.
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