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連載講座 個体の生と死・19
造血器官の発生―卵黄嚢・AGM領域から胚子肝臓へのシフトを中心として
Development of embryonic hematopoietic system-yolk sac, AGM region and fetal liver
佐々木 和信
1
Kazunobu Sasaki
1
1川崎医科大学解剖学教室
pp.334-339
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902526
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ヒトの体内に網の目のように張り巡らされた血管。その中をながれる神秘的な赤い体液‘血液’が,単なる化学物質の溶液ではなく,細胞の浮遊液であることが顕微鏡の出現によって明らかにされて以来,『血液細胞の祖先』という問題は,長年にわたり科学者の心を引きつけ,論争の的となり,その考え方も純形態学の時代から方法論の進歩とともに今日まで大きく変わってきた1,2)。とくにこの数年来,すなわち90年代後半に,細胞培養,分子生物学,遺伝子工学の手法が取り入れられることにより,それまでの考え方が根本から揺さぶりを受けた。
個体発生において血管形成と同時に進行する血球生成は,胎生期にその部位が移動するという大変不思議な現象がみられる。しかも,各系の血球は出現する時期に差異がある(図1)。なかでも,赤血球造血における原始赤血球生成から恒久型赤血球生成への変化は劇的である。有核で胎児型ヘモグロビンをもつ大型の原始赤血球と,無核で円板状をなし成人型ヘモグロビンを有する恒久型赤血球の違いは,系統発生のドラマを個体発生に垣間見る思いである。Wintrobe's Clinical Hematologyの9版3)から引用した図1は,胎生期に見られる造血の変遷過程をじつに見事に集約している。この図は,筆者が知るかぎり,古くは1961年発行の同書第5版の第1章第1図として掲載されているから,少なくとも約40年近く血液学の国際的な定番教科書に掲載され続けた。
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