Japanese
English
連載講座 個体の生と死・21
リンパ管の発生
The development of the lymphatic
中谷 壽男
1
Toshio Nakatani
1
1金沢大学医学部保健学科
pp.67-74
発行日 2002年2月15日
Published Date 2002/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902375
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
毛細血管を流れる血漿の約0.5%が血管外に漏出していく。その量は1日に約20lになる。漏出した液体成分の約90%は再び毛細血管の中に流入する。この量は1日に約18lになる。漏出量と再流入量の差の約2lはリンパとなり,リンパ管に吸収され静脈へと還流される。もし,癌治療などによりリンパ管の一部が取り除かれたり,圧迫などで潰されたりすると,リンパが吸収されなかったり,静脈への流れがせき止められ,リンパは組織間に貯留しリンパ浮腫が起こる。また,先天的なリンパ管の形成異常で,全身のリンパ管網が腫脹する先天性リンパ水腫や,大きなリンパ管腫脹である嚢胞性滑液腫が起こったりする。
癌では,血管新生因子のVEGFやbFGFなどを大量に産生し,新しい毛細血管網を癌組織内に形成し,栄養を得ている。そのため,血管新生を押さえる治療が行われている。しかしながら,癌細胞はリンパ管の新生も促すともいわれているので,癌細胞は既存のリンパ管だけではなく,この新生リンパ管に侵入しリンパ節転移を起こすと考えられている。
Copyright © 2002, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.