Japanese
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特集 幹細胞研究の新展開
造血幹細胞
The hematopoietic stem cell
依馬 秀夫
1
,
高野 弥奈
2
,
中内 啓光
3
Hideo Ema
1
,
Hina Takano
2
,
Hiromitsu Nakauchi
3
1科学技術振興事業団戦略的基礎研究プロジェクト
2北海道大学医学部第二内科
3筑波大学基礎医学系免疫学教室,先端学際領域研究センター
pp.180-186
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901567
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血液中には顆粒球,リンパ球,赤血球など種々の血球細胞が存在するが,これらすべての血球成分を産生するのが造血幹細胞とよばれる一種類の細胞群である。造血幹細胞は種々の血球細胞に分化できる能力(多分化能)と分化せずに多分化能を保ったまま自己複製できる能力(自己複製能)を兼ね備えた細胞と定義され,骨髄中で分化と自己複製をくり返すことによって,一生に亙って枯渇することなく血液細胞を末梢へと供給し,恒常性を維持していると考えられている。つまり,造血幹細胞は血液細胞分化系の頂点にあって,造血分化コントロールの中心的役割を担っているといえる(図1)。したがって造血幹細胞こそ骨髄移植の本質であり,多能性と自己複製能を持つ造血幹細胞を同定し,その分化と自己複製の制御機構を明らかにすることができれば,骨髄移植のみならず,輸血や遺伝子治療など臨床医学へも極めて大きなインパクトを与えると考えられる。本稿では,われわれが同定分離することに成功したマウス造血幹細胞を中心に最近の知見を概説する。
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