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特集 言語の脳科学
音楽の機能画像
Functional MRI of music
中田 力
1
Tsutomu Nakada
1
1新潟大学脳研究所脳機能解析学教室
pp.32-39
発行日 1998年2月15日
Published Date 1998/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901542
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Ⅰ.Introductory review:言語と音楽の神経科学
1957年に出版されたNoam ChomskyのSyntactic Structures1)は現代言語学の出発点といわれる。Harvard大学の若き研修生であったChomskyは,それまで「刺激と反応」という図柄の上でのみ語られていた言語機能を,ヒトが生まれながらに持つ抽象概念機能に基づく創造過程のひとつであると位置づけた。幼児は言語を教えられるのではなく獲得する。高度な知能に支えられた思考機能の発達の過程で,与えられた環境の中から自己の思考を伝える媒体となる言葉を見つけ出し,内在する普遍的文法universal grammarに従って言語機能を獲得するとの理論である。サルは調音器官を持つが,この「言語獲得機能」を持たないとされる。
ドイツの音楽学者Heinrich ShenkerはSyntactic Structuresの発表される20年以上も前に,全く同じ理論を音楽学musicologyに展開していたといわれる2)。Shenkerの理論がChomskyの理論の原点であったかどうかは別として,言語と音楽とが高度の類似性を持った高次機能であることには異論の余地がない。ChomskyのLanguage and Mind3)に啓蒙されたBersteinが,音楽そのものを自然言語として位置づける努力を重ねたこともよく知られている4)。
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