特集 器官―その新しい視点
3.循環器
血管:平滑筋
永井 良三
1
Ryozo Nagai
1
1群馬大学医学部第二内科
pp.396-399
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901118
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ポイント 平滑筋細胞の形質変換
血管平滑筋は生体の中で常に一定の細胞形質を持っているのではなく,細胞周期の変化や物理的・化学的刺激に応じて,細胞が表現する蛋白質,すなわち収縮蛋白,イオンチャネル,増殖因子などをダイナミックに変換する。平滑筋の形質を表現するのに最初に用いられたのが電子顕微鏡による観察である。胎児期の血管やin vitro培養条件下の平滑筋細胞は筋フィラメントに乏しく,膜様の細胞内構造に富む形態をとることが長い間知られていた1)。このような平滑筋細胞は蛋白合成や細胞外マトリックスの分泌が盛んであることから「合成型形質」と呼ばれている。一方,成体の動脈中膜の平滑筋は筋フィラメントが多く,収縮力を保っているため「収縮型形質」の状態にあるといわれる。平滑筋の形質変換の分子機構の解明は,動脈硬化や再狭窄病変形成の成因と予防法開発にひとつの手掛かりを与えるものである。
平滑筋形質変換は収縮蛋白に限った現象ではないが,収縮蛋白のアイソフォームの変化は平滑筋細胞の形質変換を鋭敏にとらえるマーカーとして優れている。本稿ではミオシン重鎖アイソフォームを指標として,平滑筋細胞の増殖と血管病変の形成に関する知見を紹介する。
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