特集 現代医学・生物学の仮説・学説
5.神経科学
意識
松本 修文
1
1九州工業大学情報工学部生物化学システム工学科
pp.558-559
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900643
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概説
意識(consciousness)とは何かを解明することは,今日の神経科学においても最も重要な課題のひとつである。意識はごく最近まで,自然科学はもちろん,心理学の対象としても考慮されてこなかった。それは,意識という概念があまりにも漠然としており,意識を客観的に測定する手法が確立されていないためであった。しかし,ようやくこの問題を限られた側面からではあるが,自然科学的に解明しようとする動きが出てきた1)。
かつて,アリストテレスは心は心臓に関係すると述べ,デカルトは意識の座は松果体であると考えたが,現在ではこれを信じる者はいない。現在では神経科学者達は,意識を含めた心のすべての面は脳の神経活動で説明できると考えるようになってきている。しかし,意識の概念は必ずしも厳密に定義されているわけではないので,研究にあたっては,意識のどのレベルを取り扱うかに注意しなければならない。意識には,(1)睡眠中ではなく目覚めている状態(vigilance),(2)感覚器で刺激を受容し,外界でおこっている事象をはっきりと「意識」している状態(awareness)および(3)自分が何をしているかを知っている自意識(self-consciousness)の3つのレベルが存在すると考えられる。(1)については,これまで生理学の成果が蓄積され,たとえば覚醒のメカニズムは脳幹にあるとされている。
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