特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅰ.上皮細胞株
消化器系上皮細胞
胃上皮細胞
ラット胃癌:BV 9
小堀 鷗一郎
1
1東京大学医学部第一外科
pp.377
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900384
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■樹立の経緯・培養条件
1977年以来われわれは近交系のウイスターラットにMNNG(N-メチル-N-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)を経口投与することによって作成した胃癌組織を同系ラット背部皮下に移植継代することに成功した。さらにこの移植腫瘍の光学顕微鏡的ならびに電子顕微鏡的検索により,胃固有上皮細胞,腸上皮細胞,内分泌細胞など種種の正常細胞の形質表現を示す細胞が存在することを明らかにした1)。われわれはこれらの結果を腫瘍細胞の多方向分化能すなわち腫瘍細胞も正常細胞と同様に多方向に向かって分化する能力を有することの証拠と見なしたが,この推論を証明するためにはまずこの腫瘍から細胞株を樹立し,クローニングから得た1コの細胞を起源とする腫瘍に同様の所見を呈示する必要があると考え培養株の樹立を試みた。
用いた腫瘍は上記近交系ラット皮下に継代した第4代の腫瘍である。初代培養3週間後10数コの培養瓶のうち9番目のボトルに上皮様細胞のコロニー3コ(7.0,1.2,1.0mm直径)が認められ(BV 9と命名),これより線維芽細胞を除去した。
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