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特集 発がんのメカニズム/最近の知見
がん遺伝子の進化―発がん遺伝子と相同配列をもつ遺伝子
Molecular evolution of the super gene family related to oncogenes
林田 秀宜
1
,
五條堀 孝
1
Hidenori Hayashida
1
,
Takashi Gojobori
1
1国立遺伝学研究所進化遺伝研究部門
pp.51-55
発行日 1990年2月15日
Published Date 1990/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900011
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レトロウイルスのいろいろながん遺伝子の塩基配列が決定され始めた頃,sisというがん遺伝子が血漿板由来の成長因子PDGFの一部であることを最初に示唆したのは,R.Doolittleによる「相同性探索」というコンピュータを用いた遺伝情報解析であった。ご存知のように,「相同性探索」というのは,今までに決定されたDNA配列データを計算機にデータベースとして格納し,機能が未知の配列とデータベースにある既知の配列(アミノ酸配列でもよいし,塩基配列でもよい)と比較し,配列上の類似度が一定程度以上あるような配列を探索して,未知の配列の遺伝子機能を推測するものである。本稿では,がん遺伝子に注目して,この相同性探索による最新の研究成果を報告したい。
がん遺伝子はトリや哺乳類のレトロウイルス,および宿主細胞そのものから多数の種類が分離され,それらがコードしていると考えられる蛋白質のアミノ酸配列の相同性や活性に基づいてsrc族やras族などのいくつかのグループに分類されている。しかも,次々と新しいがん遺伝子およびその関連遺伝子が今もなお決定されている。本稿では,「相同性探索」などのコンピュータ解析による成果が著しい,masがん遺伝子とそれと相同性のあるロドプシン超遺伝子族の機能と進化について述べる。
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