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YAPはTEADを初めとする複数の転写因子と結合し,遺伝子発現を制御している転写共役因子である。YAPはセリンスレオニンキナーゼカスケードであるHippo経路によりリン酸化され,負の制御を受ける(図1A)1-5)。1990年代にショウジョウバエのモザイク解析法を用いた遺伝学的スクリーニングによりHippo経路は発見され,本経路はショウジョウバエから脊椎動物まで進化的に保存されていることが明らかになった。2007年から2010年に行われたショウジョウバエの成虫原基やマウス肝臓を用いた研究により,YAP(ショウジョウバエホモログはYorkie)の過剰発現は過形成やがんを引き起こすことが報告された。現在,本経路は細胞増殖,細胞死,細胞分化,細胞移動など多様な細胞応答を制御し,器官サイズ制御やがん制御シグナルとして機能することが知られている。そして近年,細胞間で適応度を競い合う細胞競合にも本経路が関与していることが報告された6-8)。ショウジョウバエの成虫翅原基において,Hippo経路が破綻した,もしくはYorkieが活性化した細胞(Yorkie発現細胞)をモザイク状に発現させた場合,そのYorkie発現細胞の周辺に存在している細胞は細胞死を起こして排除され,Yorkie発現細胞が増殖することが報告された(図1B)9-11)。更に,マウス線維芽細胞を用いて転写因子TEADの高発現細胞と野生型細胞を混合し,培養したところ,野生型細胞は細胞死により排除され,TEAD高発現細胞は増殖することが報告されている12)。このように,ショウジョウバエにおいてYorkieが,哺乳動物においてTEADが細胞競合に関与し勝者の表現型を示すことが報告されている一方,哺乳動物の細胞競合におけるYAPの役割やメカニズムはいまだ不明である。本稿では,活性型YAPの発現により誘導される細胞層からapical面へ突出する現象(apical extrusion;細胞突出)と,周辺細胞が突出細胞に与える影響について,最新の結果を紹介する。
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