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特集 進化と発生からみた生命科学
全ゲノム重複に伴うシス調節配列の進化
Cis-regulatory evolution after whole genome duplication
荻野 肇
Ogino Hajime
pp.256-260
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200165
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1970年,米国City of Hope National Medical Centerの大野乾博士は,著書『Evolution by Gene Duplication』の中で,脊椎動物の祖先種で全ゲノム重複が繰り返し起き,それが進化を促進したという全ゲノム重複説を提唱した1)。彼はヒトやヤツメウナギ,ナメクジウオ,ホヤなど様々な種について,細胞当たりのDNA量をフォイルゲン染色によって調べ,ゲノムDNAの倍増化が複数回起きたと考えたのである。その後21世紀を迎え,ゲノムプロジェクトの進展により全ゲノム重複説が裏付けされたが,ビッグデータが声高に叫ばれる現在,彼が染色実験という簡単な手法で大胆かつ先見的な仮説を立てたことに,あらためて驚かざるを得ない。
これまでの研究によれば,全ゲノム重複は5億5千万年以上昔,脊椎動物の祖先種がナメクジウオなどの頭索類と分岐した後で,かつヤツメウナギなどの円口類と分岐する前に2回起きたと考えられている2-3)(R1およびR2,図1)。その後,肺魚やシーラカンス,四肢動物を含む肉鰭類が分岐した後,条鰭類に含まれる真骨類(ゼブラフィッシュやメダカのような,一般的なサカナ)の祖先種においてもう一度起きた(R3)4)。本稿では,これら全ゲノム重複に伴うシス調節配列の進化について,最近の知見を紹介する。
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