増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
7.生物集団のダイナミクス
頻度依存的に学習する天敵は餌種の共存持続性を高める
嶋田 正和
1
Shimada Masakazu
1
1東京大学 大学院情報学環/総合文化研究科 広域システム科学系
pp.484-485
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200051
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■スイッチング捕食と三者系の理論的予測
動物は,自然界では選択的な探索行動で資源(餌など)を利用している。アゲハチョウの一種は,2種の食草のうち,より多い食草に集中して産卵する。ミツバチは食道下神経節の大きな神経細胞VUMmx1の作用で,蜜が多く出ている花の色を学習し記憶して,集中してその色の花を探している。このように自然界での動物の選択行動(choice behavior)は,刺激の受容と学習・記憶が関係している。複数の餌種を同時に万遍なく探すとかえって効率が悪くなり,“注意力のトレードオフ(trade-off of attention)”と呼ばれる。結果として少数の餌種は見逃されることになる。
では,注意力のトレードオフの条件下では,頻度依存的な選択行動はどのような個体数動態をもたらすのか? この問題は米国の理論家が頻度依存的なスイッチング捕食の理論として提唱した1)。その餌種が低密度のときには見向きもせず,高密度のところで一挙に餌種を切り替えるとき“スイッチング捕食”と呼ばれる。これを示す捕食者と2種の被食者の三者系では,餌種2種が交代振動しながら永続する予測が導かれる。しかし,この理論が発表されてから40年もの間,実証研究はついぞなかった。
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