Japanese
English
特集 精神疾患の病理機構
樹状突起スパイン異常と精神疾患
Dendritic spines and mental disorders
河西 春郎
1
,
長岡 陽
1
,
葉山 達也
1
,
野口 潤
1
,
柳下 祥
1
,
石井 一彦
1
,
林(高木) 朗子
1
Kasai Haruo
1
,
Nagaoka Akira
1
,
Hayama Tatsuya
1
,
Noguchi Jun
1
,
Yagishita Sho
1
,
Ishii Kazuhiko
1
,
Hayashi-Takagi Akiko
1
1東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 構造生理学部門
pp.7-11
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101568
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大脳皮質や海馬のスパインシナプスと精神神経疾患の関係は1970年代から人間の死後脳の研究で示唆されてきたが,それらの研究では死後変化や向精神薬投与の影響が除外できず,スパインの異常と精神障害を結ぶ具体的証拠も少なかった。21世紀になり,2光子顕微鏡による樹状突起スパインシナプスの生きた状態での実験から,スパイン形態と機能の関係が解明された1)。また,疾患遺伝子解析から,精神疾患関連遺伝子がシナプスに発現していることが多いことがわかってきた2)。更に,シナプス分子や精神疾患原因遺伝子の変異マウスにおいてシナプスの機能や形態の異常が相次いで報告された3)。このような異常は正常範囲の知能と結び付きそうだが,動物行動実験の結果から,通常の記憶課題より精神疾患様の認知機能異常を起こすことが示されてきた。このことは,大脳の神経回路の正常範囲の動作ですら,シナプスの動態が鋭く規定されている必要性があることを物語っている。すなわち,シナプスレベルの学習異常は正常範囲の知能より精神病理との関係が強いことになる。特にシナプスの形態異常は,精神疾患を説明する重要な因子として認められてきた。本稿では,この点についてわれわれの研究を紹介しながら解説する。
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