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仮説と戦略
アミロイドの構造多形に着目したプリオンの感染と伝播の分子機構
Molecular mechanism of prion infection and propagation based on structural polymorphism of the amyloid
田中 元雅
1
Motomasa Tanaka
1
1理化学研究所 脳科学総合研究センター
pp.183-190
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101435
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アンフィンゼンのドグマによると,タンパク質は一次構造(アミノ酸配列)に基づいて一つの最安定構造に折り畳まれる。それとは対照的に,タンパク質がミスフォールディングし,凝集するときには異なる構造を持つ様々なアミロイドを形成しうること,つまり,アミロイドには構造多形が存在することが,近年明らかになってきた1)。興味深いことに,構造や物性の違うアミロイドは細胞へ異なる生理的影響をもたらす。その顕著な例として,同一のアミノ酸配列を持つプリオンタンパク質から,異なる表現型を示す“プリオン株”が生じる現象がある2-4)。プリオン感染がプリオンタンパク質のみで引き起こされるとするならば,プリオン株の出現機構の解明はプリオン生物学で最も重要な研究課題の一つである。
本稿では,同一のアミノ酸配列を持つモノマーのタンパク質から,アミロイドの構造多形が生じる分子機構,およびアミロイドのコンフォメーションの差異が細胞表現型の異なるプリオン株や細胞毒性の違いをもたらす分子機構について,最近,主に酵母プリオンの研究から明らかにされてきた知見を紹介する。これらの研究成果はプリオンの感染,および伝播のメカニズムの解明につながるだけでなく,近年明らかになってきた多くの伝播性神経変性疾患の新たな治療戦略の開発にも道を拓くと期待される。
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