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解説
―文部科学省科学研究費・新学術領域研究―「メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤」がめざすもの
The goal of Grants-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas“Mesoscopic neurocircuitry:towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing.”
能瀬 聡直
1
Akinao Nose
1
1東京大学大学院 新領域創成科学研究科
pp.80-87
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101417
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他の臓器と同じく分子と細胞からなる脳。その脳に,なぜ高度な情報処理能力が宿るのだろうか。本新学術領域(H22~H26)では,比較的少数のニューロン集団からなる「メゾスコピック神経回路(メゾ回路)」を,従来研究が困難であったミクロとマクロの中間層に切り込むことを可能にするモデル機能回路として捉え,その解析を通じて脳の情報処理基盤を探っています。脳の中からメゾ回路を可視化・分析し,さらにモデル化することで,物質の集合にすぎない分子や細胞が,複雑化を通じて情報処理機能を獲得するプロセスを明らかにすることを目指しています。このため,分子遺伝・光生理・数理などの先端技術を融合的に適用した包括的な脳回路研究を推進しています。本稿では,メゾ回路について解説するとともに,対談を通じて最近の話題を紹介します。
分子や細胞,すなわち物質の集合にすぎない脳になぜ情報処理機能が出現するのかは,生命科学最大の謎の一つです。この謎に迫るには,近年進展している分子・細胞などの脳の物質基盤を対象とするミクロレベルの研究や,脳の各領域を対象とするマクロレベルの研究だけでは困難だと私たちは考えています。なぜなら,ミクロとマクロとの中間の未開拓なメゾスコピックレベルにおいて,謎の本質にかかわる現象,すなわち,「物質基盤から情報基盤への変換による情報処理システムの創出」が起こるからです。そこで,本領域では比較的少数のニューロン集団からなり追跡可能な規模を持つようなメゾ回路を脳から可視化・抽出し,その作動原理を追求することにより,脳の情報処理基盤を探っています(図1)。
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