Japanese
English
特集 小脳研究の課題
小脳変性症
Spinocerebeller degeneration
石川 欽也
1
,
水澤 英洋
1
Kinya Ishikawa
1
,
Hidehiro Mizusawa
1
1東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野
pp.320-328
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101162
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
ヒトの小脳を侵す疾患には実に様々なものが存在する。例えば,脳梗塞や出血などの血管障害,ウイルスなどによる感染性小脳炎,奇形・発達異常,腫瘍,中毒や欠乏性疾患,代謝性疾患,ミトコンドリア異常,それに多発性硬化症などの脱髄性疾患や自己免疫疾患,あるいは肺がんなど小脳とは直接関連のない部位の腫瘍の発現が小脳の障害を起こす傍腫瘍性症候群など,多種類の疾患が小脳を障害しうる1,2)。また,小脳は大脳に比べて老人斑や神経原線維変化などの老年性変化は起きにくいにもかかわらず,老化によって脳の中で最も萎縮しやすい部位の一つであるともいわれている3)。低酸素状態に陥ると最初に障害を受けうる脆弱な部位としても知られる。
このような多種類の疾患のうち,小脳の変性疾患は歴史的な経緯から脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration;SCD)と呼ばれてきた。これは,「小脳またはその求心路,遠心路を中心とする神経系が系統的に変性に陥り,おもな症状として運動失調を呈する疾患の総称」と定義できる1)。SCDの中には小脳皮質のみに限局した変性をきたす疾患(病型)から,小脳だけでなく大脳,脊髄など広い範囲に障害をきたす疾患まで多種類の疾患が存在する。また,病因論的には遺伝性の疾患(わが国では全SCDの約40%)と非遺伝性(孤発性)疾患(約60%)4)があり,前者は常染色体優性遺伝型,常染色体劣性遺伝型,X染色体連鎖型に分けられる。
Copyright © 2011, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.