Japanese
English
特集 ユビキチン化による生体機能の調節
SCFユビキチンリガーゼによる細胞周期S期開始制御機構―S期開始制御におけるSCFCdc4の基質は何か
SCFCdc4 regulates S phase entry through degradation of Sic1 and Swi5
岸 努
1
Tsutomu Kishi
1
1東京工業大学大学院生命理工研究科
pp.514-520
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100940
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
染色体上の遺伝情報を正確に維持するためには,細胞周期の進行は厳密に制御されなければならない。細胞周期の進行制御において中心的な働きをしているのは,サイクリン依存キナーゼ(Cdk)と呼ばれるリン酸化酵素である。Cdkは細胞周期の各時期に特異的に発現するサイクリンと複合体を形成して機能する。染色体の複製が行われるS期に入るためには,S期サイクリン-Cdk(S-Cdk)が活性化される必要がある。S-Cdkの活性化はS期サイクリンの発現と,S-Cdkインヒビター(CKI)の分解により制御される。CKIの分解はSCF(Skp1-Cullin/Cdc53-F-boxタンパク質)ユビキチンリガーゼ1-3)によるユビキチン化を介して行われる。これまでこのSCFによるCKIの分解はS期開始に必須な制御であると長い間,考えられてきた。
しかし近年,S期開始の制御においてSCFによって分解されることが重要であるタンパク質がCKI以外にも存在すること,すなわちSCFに依存したユビキチン化・分解を介した未同定のS期開始制御機構が存在することが示唆されている。これは出芽酵母においてSCFCdc4(F-boxタンパク質としてCdc4を持つSCF)によるユビキチン化を受けずに安定化する安定化型Sic1(酵母のCKI)を発現する細胞は,S期開始に大きく遅延が見られるものの生育が可能であるというCrossのグループの研究に基づく4)。
Copyright © 2009, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.