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最後野は延髄背側部の第4脳室の最尾側部に隣接する部位にあり,脳室周囲器官のひとつである(図1)。脳の血管は通常,血液脳関門(隣接する内皮細胞が癒合してタイトジャンクションをなす)を持ち,血液中の化学物質が脳内へしみ出さないようになっているが,脳内にはこの血液脳関門が欠損している部位が7ヵ所ある。最後野はその一つである。このような部位のニューロンは常に,血流により運ばれる化学物質にさらされる。最後野ニューロンは種々の化学物質に対して感受性をもつため,血液中の化学物質の濃度変化を感知するセンサーのような働きをしていると考えられている。また,最後野ニューロンへは迷走神経からの直接および間接の入力があり,内臓感覚などの自律神経系の感覚情報を察知できる。最後野ニューロンはこれらの液性および神経性の入力を統合し,神経連絡をもつ視床下部や孤束核のニューロン活動を修飾する。これにより最後野は,摂食行動1-3),体液恒常性4,5),循環調節6)などのホメオスタシスに貢献する。また,イヌやネコなどの嘔吐する動物においては,最後野ニューロンが各種催吐物質に反応して嘔吐を惹起することから,最後野は化学受容性嘔吐誘発域(chemoreceptor trigger zone)とされる7)。ラットは嘔吐しない(できない)動物であるが,これらの動物種においても,最後野ニューロンが悪心を惹起することが,味覚や薬物による条件付け学習の実験からわかっている8-10)。このように化学受容性に富み,自律機能の調節を担っている最後野ニューロンにおいて,ペースメーカー電流の活性が発見されたことは,自律系の神経調節機序を考える上で大変興味深いことである。
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