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細胞内カルシウムイオンは平滑筋の収縮をトリガーする主要な因子であり,収縮性受容体作動性生理活性物質や伸展による血管収縮にはこれらの刺激によって引き起こされる細胞内遊離カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)の上昇が必須の役割を果たしている。カルシウムイオンは,平滑筋の収縮装置であるミオシンフィラメントとアクチンフィラメント間相互作用の活性化を引き起こすことにより,収縮を惹起する。カルシウムイオンによる収縮フィラメント活性化の主要な分子機構は,ミオシン分子の20kDミオシン軽鎖(MLC)サブユニットのリン酸化である。ノルアドレナリンをはじめとする神経伝達物質やホルモンによって引き起こされる[Ca2+]iの上昇は,カルモジュリン依存性リン酸化酵素ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を活性化して,MLCのリン酸化を引き起こす1)。
長い間,カルシウムによって引き起こされるMLCリン酸化は,もっぱらリン酸化酵素であるMLCKの活性化によると考えられてきた。ところが,われわれは最近,カルシウムがMLCを脱リン酸化する酵素ミオシンホスファターゼ(MLCP)の抑制を誘導することを見出した2)。この発見により,[Ca2+]iの上昇はMLCK活性化とMLCP抑制の二つの作用を介して,効率的にMLCリン酸化レベルの上昇,さらには平滑筋収縮を引き起こすことが明らかとなった。カルシウムによるMLCP抑制は低分子量G蛋白Rhoを介するが,われわれは,カルシウムによるRho活性化にホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)クラスⅡアルファ酵素(PI3K-C2α)が関与していることを見出した3)。 本稿では,これらCa2+による血管収縮活性化機構の新展開について述べる。
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