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意識を理解しようとするのは,ヒトがヒトを理解しようとする上での不可避な欲求だろう。しかし,われわれが通常用いている意識という単語は,大変広範な概念が網羅されている言語と考えられ,それを厳密に定義しようとすることは現時点では非生産的1)であるし,より実質的には科学的探索の幅を狭めることにもなりかねない。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)に代表される近年の神経画像法の技術的発展により,ヒトを対象とする神経科学の実験が広く行われるようになり,そのなかで,意識を理解するにために助けとなりそうな研究も報告されてきた。本稿では,こうしたこれまでの神経画像研究を鳥瞰することを一つの目標とする。この際,便利であるが強い限定も行わない,意識の二つの構成要素は「意識内容」と「覚醒」である2),とする古典的な考え方に沿って話をすすめたい(実際,この一見単純にすぎる捉え方は,筆者が医学部卒業後の数年間,脳神経外科診療を行っていた際に,患者を診察する上で大いに役立った)。
「意識内容」については,これまでも多くのシステム神経科学者が(意識的であれ,無意識的であれ),研究の対象としてきた。そしてこの意識内容に迫る有力な切り口が,意識にのぼる脳内情報処理と,意識にのぼらない膨大な脳内情報処理(無意識)との相互作用・相互依存性への着目1)と考えられる。いわゆる「気付き」に着目した研究は,視覚刺激を用いた実験系で最も制御しやすいため,これまで主に視覚入力の主観的知覚を対象として行われてきており,本稿でもまず始めに,これらに関連する神経画像研究について紹介させていただく。さらに,意識内容は感覚入力の処理のみならず,運動出力の処理においても「主体感覚」として認識される。感覚運動の情報処理過程に沿って意識内容について論じていくことが,意識の理解に有用だろう3)(図1)。本稿では次に,この感覚運動の情報処理過程に沿って,意識内容についての神経画像研究の全体像を紹介する。
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