徹底分析シリーズ 意識のバイオロジー
温度計に意識はあるか―意識レベルの定量化へ向けた理論と実践
大泉 匡史
1
,
土谷 尚嗣
2
OIZUMI, Masafumi
1
,
TSUCHIYA, Naotsugu
2
1University of Wisconsin-Madison/理化学研究所/JSPS
2Monash University/PRESTO/理化学研究所/California Institute of Technology
pp.352-359
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101501
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「温度計に意識はあるか?」
こう聞かれれば,ほとんどの人が当然のように「ない」と答えるだろう。この質問に「ある」と答えるような人は,麻酔科医としては失格だろう。しかし,はたして本当に「ない」と断言できるのだろうか。
仮に,温度計に意識がないと信じるとして,意識をもっている(と信じる)われわれ人間と温度計との決定的な違いは何か。一見,馬鹿馬鹿しく思えるこの問いは,麻酔科医にとって深刻な問題につながっている。外からは麻酔が効いているように見えて,意識を消失していそうな患者の意識が本当にないのかを判断する基準は何か,という問題である。麻酔以外の分野でも,言語を使えないヒト(胎児や脳障害患者)や,ヒト以外の動物(サル,イヌ,ネズミ,ヒトデ,ゾウリムシなど)にどこまで意識はあるのか,といった重要な問題にも通じている。
本稿では,この究極ともいえる問題に科学的に答えるための手がかりとなる理論と実践,そして筆者らの取り組みを紹介する。
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