特集 おなかの病気を診る〜機能性消化器疾患への誘い—つらいおなかの痛み、張り、下痢、便秘への処方箋
扉
中野 弘康
1
1竹山病院 内科
pp.732-733
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350070732
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おなかの悩みで困っている患者は、外来、在宅、病棟などセッティングを問わず多い。また思春期から高齢者まで、年齢層も幅広い。そんな腹部愁訴で来院した患者を前にしたとき、まず器質的疾患を否定すべく精査を行うと思われる。しかし、器質的な異常がないことがわかると、「当方でこれ以上やれることはない」「メンタルからくるものでは?」と他科(心療内科や精神科)へコンサルト…。そんな場面も散見される。
“器質的な異常がない”ことは、“病気がない”ことと同義ではない。検査所見で症状を説明しうる明確な原因がなくとも、患者は困り果てて来院しているのである。患者の訴える切実な悩みに介入し、少しでも症状を緩和できるように考えたい。そんな思いが、本特集の企画に繋がった。
本特集号では、一見、機能性疾患に捉えてしまいがちな器質的疾患や、診断できると患者に安心感を与えられる機能性疾患を提示した。さらに、患者の悩みを解決するための方法論として、西洋医学にとどまらず、東洋医学をはじめとした非薬物療法によるアプローチも提示した。
困っている患者の声に耳を傾け、おなかを触りながら、つらい症状を緩和する方法を考える。そして再診を重ねて、患者との信頼関係を構築していく。一見するとシンプルではあるが、このプロセスが患者に与える効果は計り知れない。
本特集が、おなかの悩みで困って受診した患者の福音となれば幸いである。

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