連載 職場のエロス・7
青い瞳
西川 勝
1,2
1老人保健施設ニューライフガラシア
2大阪大学大学院臨床哲学博士課程前期2年
pp.75
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900696
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いつものように、食堂にはタケさんの朝食が残っている。彼女が朝食をみんなと一緒にとることはめったにない。夜中、ひとりで施設を歩き回っていることが多いのだから無理もない。痴呆になる前、商売をしていて夜が遅かったので、朝昼兼用の食事が習慣だったと息子さんから聞いたこともある。
それでも、気になって、カーテンが引かれたタケさんのベッドをそっと覗き込む。ベッドの端に今にも落ちそうに身をかがめて眠りこけているタケさん。昼間はまとめてある白髪も乱れてシーツに広がっている。その鼻先には、金髪の青い目をした女の子の人形がパッチリ両目を開いたまま天井を見ている。
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