連載 職場のエロス・8
覚えのない傷
西川 勝
1,2
1老人保健施設ニューライフガラシア
2大阪大学大学院臨床哲学博士課程前期2年
pp.69
発行日 2002年3月15日
Published Date 2002/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900462
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「どうして隠すの。何もかも知っているくせに。どうしてよ。そんな困った顔したって誤魔化されない。私のことをみんなに言いふらすのはやめてよ。こんなに嫌がってるのがわからないの。わたしが苦しむのを楽しんでるんでしょう。いろんな手口で私を付け狙っているのは前から気がついてた。でも,最近あんまりひどいから先生に相談したのよ。そしたら,私の先生にまで手を回してたね。どんな恨みがあるっていうの。この唇の傷だって,わたしが寝ている隙にカミソリの刃を入れたのはばれてるからね」。
異動して間もない女子閉鎖病棟で,彼女からの妄想攻撃を受けるのは初めてだった。
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