特集 精神科治療、この10年で覆った常識とは
“不要な神話”を手放した人たち
精神科領域に“神話”がうまれやすい要因は何だろうか?
松本 俊彦
1
1国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部
pp.6-8
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201076
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
精神科領域のさまざまな“神話”
精神医学の世界は、不思議な“神話”が生まれやすい領域だ。私は精神科医をかれこれ30年やっているが、その間、さまざまな“神話”が信じられ、廃れていった。代表的な“神話”としては、井原裕が著書『激励禁忌神話の終焉』(日本評論社, 2009)でとりあげた、「うつ病患者を励ましてはいけない」があるが、他にも枚挙にいとまがない。
たとえば、「統合失調症患者に幻聴や妄想の内容をくりかえし聴いてはいけない」という“神話”があった。理由は、語ることを通じて患者が自身の病的体験をますます確信し、強化してしまうから、ということだった。
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.